会場を埋め尽くす来場者の拍手喝采で杜子春ライブが終わり、互井さんの法話が始まりました。
この後いよいよ私たちの出番です。
私のそばから無線で総指揮を取る大役をつとめるTBC実行委員、
浄土真宗本願寺派正法寺ご住職の白川さんが、遠くの方からこちらに手を振っています。
ものすごい混雑でなかなか演奏台までたどりつけないご様子。
ようやく到着、と思ったら今度は無線マイクが壊れた!?
直前のチェックのため白川さんが皆さんに何度呼びかけても、
誰からも返事がないのです。
電話で連絡を取ってみましょうか、と携帯を取り出したものの、法話も終わりかけ、時間がない。
もうどうにでもなれ!とやけっぱちで弾く体勢に入ったその時、無線で応答が入りました。
演奏1分前。
皆さん白川さんの声は聞こえていたのに、自分が答えていいものかと遠慮されていたようです(後日談)もぉぉおっ。
演奏1分前。
弾き出しのキーワードは、互井さんの「ハピネス観章でした(振り付き)」
...ホントにやるとは...
演奏を始めましたが、50センチほど先には観客がひしめいています。
「ほら見て、これパイプオルガンなのね」
「あら。このひと足も使って弾いてるわよ。たいしたもんねえ」
かつておじいちゃんに連れられて行った、上野動物園のパンダを懐かしく思い出しました。
オルガンの演奏と同時に、ナレーションの北原久仁香さんの落ち着いた声で各宗派の概要などが語られ、その間にそれぞれ一番綺麗な衣体に身を包んだお坊さん達が、花道をしずしずと歩きます。
衣体はもちろん、お坊さん達は歩き方もものすごくきれいなので、これだけで美しい!
本堂の空気が一気に研ぎ澄まされていきます。
整列したところで演奏はストップ。ここから声明が始まります。
天台宗、真言宗、浄土宗、浄土真宗、臨済宗、曹洞宗、日蓮宗、日蓮宗の尼僧さん、
全部で7宗派の声明を順番にご披露。
演奏台から撮った各宗派の様子

かなり距離があります。
人で埋め尽くされています。
本番中ですがあまりにきれいなので、
ついついシャッターを押してしまいました。
最近どこでもすぐカメラを構えるので、
実行委員の方々からは、カメラ小僧呼ばわりです。
いいんです。プロ根性と言ってください。
カメラは、このブログを始めるまで持ってさえなかったんです。
マイファーストデジカメです。
初めて写真をPCに落とした日には、何時間かかったことか。
それからたった3ヶ月、人間やればできるものです。
話しがそれました。
照明もきれいです。

柱に模様が映し出されています。

11月30日に行われた全体リハーサルには、来られなかったお坊さん達もたくさんいます。
実行委員から細かい指示はあったものの、要するにぶっつけ本番。
音楽家がリハーサル無しで本番に臨むなんて考えられない事ですが、そこはさすがお坊さん。
度胸がちがいます。
(「どきょう」と打ち込むと「読経」と変換される近頃のうちのiMac...)
本番に強い。
堂々たるものです。
私だったら緊張でめまいをおこして、歩くことすらできないでしょう。
で実際どうだったんでしょう。
ホントのところ緊張しました?
宗派ごとの声明が終わると、全宗派の僧侶36人が一斉にステージにアーチ状に整列。
「三帰依」という声明をオルガンの足鍵盤のズーンという低音を伴奏に、一斉に読み上げます。
ここからが一番の見せ場。
合同法要です。
オルガンの前奏が静かに始まり、
篳篥(ひちりき)が加わったのをきっかけにお坊さん達はそれぞれ自分の宗派の声明を、お互いに合わせることなく口々にに読み上げながらゆっくり歩き出します。
笙が加わり、笛が加わり、太鼓が加わって(これらもなんのルールもなく無秩序に演奏されます)声明が自然と徐々に大きくなっていき、オルガンも少しずつ重ねる音を増やして、
盛り上がっていきます。
写真は事務局の深水さん撮影。

それぞれが勝手なことを一斉にやるわけですが、これらが合わさると大きなうねりが出来上がって、不思議な倍音のようなものが聞こえて来るのです。
鳥肌が立ちました。
ここで仕分けが大変だった華葩(けは)の登場です。
お坊さん達は声明をとなえながら、
ゆっくり花道を歩いて、ひとり1200枚の華葩を盛大にまきます。
あの苦労が一瞬にして...

なんてことはどうでも良くなるくらい、夢みたいに美しかった。
この瞬間をずっと覚えていられますように。

全員が再び一列に整列するのを待って、終わりのきっかけをこちらで合図する約束です。
お坊さん達、気持ちよくなっちゃったのか歩く速度がかなりゆっくり、華葩がまき切らない、実は花道はリハーサル時より1.8メートルも長く作られていた(後日談)...
こんな理由で合図を出すのに、打ち合わせで決めておいた演奏時間の倍くらいかかりました。
演奏中怖かったのは、人が多すぎて音が吸われてしまったこと。
自分の演奏している音が、よく聞こえないのです。
それからいっぱいの観客で視界を遮られて、
ステージ上で何が行われているのかよく見えなかったこと。
雅楽の人達とアイコンタクトを取ろうなんてもってのほかでした。
ステージがよく見えないまま、祈るような気持ちで合図を出し、
白川さんが無線で「声明止めて下さい」と連絡。
ここで声明が止まるはずが、30秒くらい経っても一向に止まない。
あ~もう、お願い通じて!!と思い切って終止のコードに入ったところでようやく声明が止まり、太鼓の連打のあと大きく一発ドン→オルガンとひちりきが止まる→笙だけが残る。
奇跡的に全てのタイミングがうまく行きました。
本堂は色とりどりの華葩43200枚と、拍手の渦で埋め尽くされました。

実行委員長、築地本願寺ご輪番の挨拶。
「日本を代表する仏教の宗派が集まって衣体、声明をご披露しましたが、それぞれの特徴をご堪能いただけたと思います。
この初めての試みは、実は各宗派の特徴をお伝えしたかったのではなく、仏教の根源に流れる<すべてのものが繋がっている>という縁起の教えによって実現しました」
終了後、本堂を出ようとごった返す人混みの中で白川さんと固い握手を交わし、控え室に戻る途中、築地のお坊さんで実行委員の福井さん(このブログを日々担当して下さっています)にばったり。
目が真っ赤です。
実行委員の吉川さん、ハピネス観章さんと3人で抱き合って男泣きしたとか。
「セクハラになるかもしれないですけど」(なんて断るところがやっぱりお坊さん。)
と私たちもハグをして喜び合いました。
「僕たち普段お経をあげたり、雅楽を演奏したりして拍手なんかもらったことないんです。
見て下さってる方、みんな笑顔で喜んで下さったんです。
もうたまらないっす。やみつきになります」
控え室で着替えかけていたら、吉川さんが訪ねてきてくれました。
このヒトも目を腫らしていました。
「前の日寝不足だったから」なんて言ってましたけど、
後日放映されたTVで、観章さんとの涙の抱擁のシーン、ばっちり映ってましたよ。
せっかくなので皆さんで。


この日の総来場者はなんと15000人。

本堂に入り切れない人達のために、境内にはこんなバスが用意されていました。

忙しい合間を縫っていらして下さった、日本音楽集団(邦楽器のプロの演奏家集団)代表で指揮者の田村拓男さんからメールを頂きましたので、最後にちょっとだけ。
「先日は、なんとも素晴らしいイベント?コラボレーション!感激でした。
お坊さんたち自力で企画構成したんですか。
これまでは全く考えられなかったことです。
"流派(宗派)を超えて..."、邦楽界の日本音楽集団誕生にも似ていて共感です。
こんな時代、お坊さんの(宗教家)の出番ですよね。
あまりにも眠ってい過ぎた。遅きに失したとも言えます...」
2008年も始まりました。
さあ、これからがお坊さんたちの出番ですよ!
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