続いておなじみ横浜みなとみらいホールで、久しぶりにルーシーと再会。
神奈川フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会。

曲はブルックナーの「テ・デウム」
オーケストラと神奈フィル合唱団のリハーサル風景。
ななめ上横から撮ってみた。

今回、このオーケストラの音楽監督であるマエストロ・シュナイト氏が
指揮を振る最後の定期公演となる。
毎度のことながら、本番で演奏するルーシーでオーケストラと合わせられるのは
当日のリハーサル一回限り。
音のバランスがとても気になるところだ。
小さなオルガンはストップ(音色を変えるノブ)を自分で、あるいはアシスタントが
手で出し入れして音色を変える操作をするが、
このように60個以上もストップを持つ大きな楽器ではそれがかなわないので、
オルガンの中にコンピューターが組み込まれている。

今回私がホールからもらったメモリーの番号は、61から70。
61-1、61-2...61-20というように各ランクに20個の音の組み合わせを入力できる。
20×20=400通りの音色を組み込んで準備しておけるというわけ。
あらかじめ別の日にホールにひとりで行って、
音をあれこれ考えて組み合わせて、ここに記憶させておく。
この作業を通称レジスト(レジストレーションの略)と言う。
オーケストラとのバランスが難しい今回のような場合は、
リハーサルで指揮者の要求に出来るだけさっと対応できるように、
各場面につき音をちょっと小さめに作ったもの、大きめに作ったもの、
その間くらいのもの、というように3通りくらい用意しておく。
シュナイト氏は、練習の時みんなが震え上がるほど厳しい。
目指す音楽を常に厳格に持っていて、決して妥協を許さないのだ。
オーケストラが盛り上がってテンポが速くなりそうになると、
ぐっと馬の手綱を引き寄せるかのように、
決して、決して先には急がせない。
「すべての音をよく聴いて。よく聴いて。」口に出さずとも、こんな声が聞こえて来る。
かなりのお年と見たが、気迫満点だ。
いつ指揮棒がオルガンのところまで飛んでくるんじゃないかと、
ヒヤヒヤドキドキ。
この曲のリハーサルに入る直前、いきなり「オールガン」と呼ばれた。
「うわっ来た...。」
「オケは静かに!!」
...一同しーん...
大声で指揮者とやり取りをするこの瞬間が、
小心者の私はいつまでたっても苦手。
シュ「ちょっと弾いてみて。」
私「は、は、はい。」
シュ「大きい!ミクスチャーを引っ込めて。」
私「これでどうですか?」
シュ「うーんやっぱりもう少しなにか足して。」
私「リード管をすこし足しました。」
シュ「今の足使いはどうなの?
僕はオルガンも弾けるんだよ。」
私「げっ、マジ?(これはつぶやき)」
なんていうやり取りを繰り返しつつ、なんとか切り抜けた。
途中思うところと少しでも違う音楽になりかけると、
ここに大映しになった彼の顔色がぱっとかわる。
「ひいぃぃ。」

本番直前まで舞台上で微調整をするのはいつもティンパニーと
(後ろから失礼)

ハープ。

この方々の合間を縫って、往生際悪く最後まで残って
ぎりぎりまで音を考えている。
ない頭を一気に使うこんな時は、本番でぷっつり集中力が切れぬよう
チョコレートと、即エネルギーになるバナナを食べて、いざ出陣。

ところで今回は使わなかったが、ルーシーは
日本では珍しい「チューバ」の音色のパイプをいくつか持っている。

このペダルのTuba profunda 32'の最低音は
地を這う、うねるような響きと振動。
アイススケートの安藤美姫ちゃんがこのシーズン使っていた、
サン=サーンスの「交響曲第3番・オルガン付き」の
フィナーレの最後の最後でこのストップを引っ張ると、
「う〜んオルガン弾いてて良かった」と思うたまらない瞬間がやってくる。
でもね、美姫ちゃんの演技用にカットされたヴァージョンは、
オルガンが入っていない前半部分が延々と流れて、
ラスト10秒で「ジャーン」とオルガンが鳴るクライマックスの部分が
突然付け足されてある。
わたし的にはどうよ?あれ。
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