散歩

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 Sさんは、たしか私と同年です。40年ほど前、佛教青年会の中の一番のお姉さんとして、頑張ってくれました。

 その彼女と、久しぶりに、道でバッタリ出会ったのです。頭髪は真白。
 「お元気?」
と訊ねますと、70何歳まで、結局、結婚はせず、
 「兄が寝たきりなので...」
とのこと。しかし毎朝、運動のために、散歩しています、と言います。

 彼女の家は、私の家から1キロ足らず、近所のNさんは毎朝、お寺に参ってきますから、余程「女同士誘い合って、お参りすれば...、運動にもなるし...」と言おうかと思ったのですが、お兄さんの看病もあることだし、うっかりしたことは言わぬ方がと思って、ことばを飲み込んだのです。

 ところがそれから半年たらず、ふとしたことから彼女が認知症で、施設に入っている、身内の者が行っても、わからない状態だと聞いて驚くとともに、非常に後悔しました。

 あの時、朝のお参りをすすめ、それを彼女が実行していたら、聞法にもなり、またお友だちも出来て、一日中、黙りこくっての看病生活から、少しの間だけでも解放されただろう。特に女性は、おしゃべりする相手がいなくなると、老化が進みやすいのですから。

 私は、まるで私のせいで、彼女が認知症になったかのような気がして、それを思うと憂鬱なのです。

 だから、ただ散歩ではなく、お寺参りの散歩を、時間に余裕のある方々に、おすすめします。

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