赤とんぼ(1)

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 私の好きな歌の一つに、有名な詩人三木
露風作詩、かつての日本の代表的な作曲家
の一人、山田耕筰作曲の「赤とんぼ」が
あります。
 春の歌「早春賦」も大好きで、歌詞も
メロディーも「早春賦」の方が格調は高い
かと思いますが、「赤とんぼ」には、優しさ、
素朴な哀愁がありますね。

 もう40年数年前のことですが、インド
留学中の一夕、外国からの学生にインド人
学生もまじって、十数人で懇親の集いを行い
ました。
 食事が終り、紅茶やコーヒーが出て、
お国自慢も飛び交っている間に、誰が言い
出したか、それぞれ母国の歌を披露すること
になりました。
 その時、誰がどんな歌を歌ったかは憶えて
いないのですが、私はほとんど何のためらい
もなく、「赤とんぼ」を歌いました。

 もちろん、私は歌は上手ではありませんが、
幸いに何とか思い出し思い出ししながら、
やっと四番まで歌い終わった時、多分、ほかの
誰の時よりも大きな拍手が起こりました。
そして口ぐちに、「歌詞の意味を教えてくれ」
というのです。

 歌詞を思い出して歌うだけでも、やっとこさ
だったのに、メロディーなしで歌詞を語り、
全く文化・風俗の異なる彼らに、その意味を
説明するのにはかなり難渋したことを今も憶え
ています。

(豊原大成 『心の風景Ⅲ』 自照社出版 2006年より)

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