私は、もう長い間、二週間に一回の散髪を
原則としていました。近頃は多忙の度が加わ
って、三週間に一度ぐらいになりかねないの
ですが、私にとって、理髪店での楽しみの一
つは、理髪用の椅子に坐っている間、書籍も
ペンももたず、専ら考えごとに専念できる
(せざるを得ない)ことと、更に大きな楽し
みは、特に頭髪に鋏を入れてもらっている間
に居眠りをすることです。これは理髪師に
とっては、多少は仕事がしずらいかもしれま
せんので、ぐっすり眠ったと思った時は、
「やりにくかったでしょう」と、あやまる
ことにしています。
ところが、この、上記の楽しみの何れもが
不可能になる場合があります。それは近隣の
客のあたりかまわぬおしゃべりです。これを
やられると、うるさくて眠れないし、考え事
も出来ない。20分、30分、時には40分、
その客か私かの何れかの理髪がすむまで、
おしゃべりが耳に入ってきます。
そしてそのおしゃべりの内容というのが、
ほとんどの場合、別に今、問題にしなくても
よい世間話か、または客自身の自慢話です。
疲れて眠いとき、何か考えをまとめなけれ
ばならない時、こんな相客に遭遇するのは、
全くやり切れません。
もっとも理髪店だけではない。列車内での
乗客のおしゃべり、それもよく徹る声の場合
は厄介です。居眠りも、読書も、考えごとも
出来ません。
こんな時は、出来れば少しでも離れた席に
移動しますし、近距離電車で然るべき空席が
見つからない場合は、ドアーのそばなどに行っ
て立つことにしています。
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