ところで、書の上手下手、美醜は、何によっ
て決まるのでしょうか。これは実にさまざまな
要因が複雑に作用しているようです。
まず、書は点と線との組合せです。しかも点
にも線にも、縦、横、斜めなど、いろんな種類
があります。それらがうまく組み合されて、
一つの字、一行の書になるわけです。
書の根本は、天と地とを貫く直線だという人
がいます。五字、十字であろうが、二十字、
三十字であろうが、それぞれ形の異なる文字が、
縦一直線に、ピント張りつめたように並んで
いないといけない。これこそが書の生命である
との説には、なるほどと肯かされるものがあり
ます。
書の一字一字についても同じことが言えるで
しょう。そしてそのために何よりも大切なこと
は、縦の線、横の線が、たとえ一本だろうと
三本、五本だろうと、ちょうどよい角度・間隔
で、力強く美しく引かれていることが、欠くこ
との出来ない条件でしょう。また、点一つでも、
それを打つ場所によって、文字全体の感じが
違ってきます。
だからまず最初に、筆を正しい位置に打ちこ
むことが大切ですが、ひとたび紙上に下された
筆は、目指す方向に向けて、目指す位置まで、
まっすぐに引かれなかったら、決して美しい
文字にはなりません。
ただし、一口にまっすぐと言っても、縦線の
場合は中程が左に張ったり右に張ったり、
下端で筆を抜いたり、止めたり、左へ刎ねたり、
横線でも上に反ったり、下に反ったりするの
ですが、そのためにも、何よりも必要なのは、
まず線をまっすぐに力強く引く筆法の習熟で
ある。だからこそ楷書がすべての書体の基本
だといわれるのです。
(豊原大成 『心の風景 Ⅲ』 自照社出版 2006年)
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