2009年5月アーカイブ

 僧侶が野外(たとえば墓前)などで用いる鏧に引鏧があります。口径2~3寸(6~9センチ)のものが多く、底に穴を開け、小さな鏧布団を着け、穴から通した組紐や細棒などで保持し、木製または細い金属製の桴で口縁の外側を叩きます。

 鏧には例えば大谷派(東本願寺)で用いる平鏧(口径1尺、高さがその3分の1ほど)などあり、宗派によって更に別種が使われているようです。
 お仏壇に用いるリン(鈴)は口径が5寸(15センチ)前後、お仏壇の大きさによっては口径2寸(6センチ)前後の小型もあります。
 5寸前後のものなら、右膝の斜め前に置いて、口縁の内側を桴で引き上げるように打ちます。小型は外側しか叩けないでしょう。

親の背を見て

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本願寺築地別院(通称、築地本願寺)は、本堂の背後に職員のための集合住宅があり、独身者も居ますが、職員の多くは家族同伴で入居しています。
 但し家族同伴者の場合、その年齢層にもよると思いますが、子供さんたちは、ほぼ未就学児で、中には乳幼児もいます。日曜日など、空き地で、あるいは建物の階段などで、数人が仲良く遊んでいるのを見かけますし、平日でも、幼稚園などから帰って来てからでしょう、夕刻近く、若いお母さんたちも混って、大勢で遊んでいます。

春の1日、K君のお寺の親鸞聖人750回大遠忌法要ならびにK君の住職継職奉告法要に出勤しました。
 このあたり、近年まで「郡」だった播州平野の一角です。前日来の雨が心配されましたが、お天気は何とか保ち、前夜宿泊した駅前のホテルまで迎えに来てくれた乗用車の中から、途中、西方の山から山に入る大きな虹の美しさに、しばし見とれていました。こんなに完全な虹を見たのは初めてだったのです。

7.壱越キン

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【編集部注】____________________________________
*お使いのPCの環境によっては鏧(キン)の字が表示されないことがあります。
鏧(キン)の字は磬の下の"石"の部分が「金」になります。
キンの字
キン.jpg
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 読経は美しい声で、みんなで揃って行うのが理想的ですが、厳密に言うと、読経にはさまざまな、定った音の高さで誦えねばなりません。
 京都の西本願寺だけでなく、私たち一般の寺院や各家庭でも、通常は毎朝、親鸞聖人が御文をおつくりになった「正信念佛偈」と、それにつづいて「和讃」を読誦します。この場合にも、最初、「帰命無量寿如来、......」は壱越調で発音(発声)すると、きめられています。
 しかし、たとえばピアノやオルガンなどの伴奏無しに、正確に楽譜通りの音の高さで歌唱することが必ずしも容易ではないように、「正信偈」の場合も、定った音の高さで発声することは、余程習熟していないと難しいのです。
 あれはもう、3~40年も前のことでしょうか。
 TVに「題名の無い音楽会」という番組があり、確か作曲家、黛敏郎氏が担当していました。音楽を、様々な角度から演奏し、解説する大へん楽しい番組でしたが、ある時、何だったかシンフォニーの1節を演奏し、会場の聴衆に、「さて、この曲名は?」と質問しました。曲が何だったか忘れてしまいましたが、非常に有名な曲だったので、私などにもすぐわかったほどでした。果して、会場からの答えも正解。
 ところが黛氏の曰く、「それは正解ですが、また正解とも言えません」といって、先刻の曲を音を上げて演奏し、「これが本来の譜面の音の高さなのです」と紹介しました。これが音楽というものなのでしょう。
 だから私達も、読経に際しては、正しい音の高さとスピード、リズム、それに姿勢その他、仏前での作法を、常にわきまえねばなりません。(尤も、"そんな難しいものなら、もうやめた"、などと言わないで、下手でも結構ですから、どうぞ毎日、読経してください。ここではあくまで原則をお話しているのです。)

 さて、こんなことから、読経に際して、少なくとも序奏の役割を果たしてくれるものとして"リン"を利用したらよいわけですが、一方、大鏧にしても沙羅にしても、出る音の高さは区々です。全く同じ鋳型で造り、同時に炉で焼きを入れても、同じ音が出るとは限らないのだから、不思議といえば不思議、面白いと言えば面白いものです。
 それで、大平洋戦争終了後間も無く、昭和20年代の中頃のことと聞いていますが、読経とか作法に関して殊に厳重であられた前門主の御意向で、打てば壱越の音が出る鏧が造られたのです。それが口径8寸、深さ4寸の壱越鏧で、大へん面白い、また都合の良いことに双調も同時に鳴ります。
 毎朝の正信偈と和讃の最初は壱越、正信偈の最後の音は双調ですから、その何れによっても音程の正否がチェック出来ますし、平調(ハ調ミ)や黄鐘調(ハ調ラ)で発声せねばならない場合も、それぞれ"キー"を一度だけ高く発声すればいいのですから、本当に便利です。
 なお叩き方は沙羅の場合と同じです。
 【註】壱越鏧が考案される以前は本願寺御影堂では沙羅、阿弥陀堂では小型の鏧=小鏧が用いられていたようです。
 【ご注意】壱越鏧の名で店頭に並んでいるのに壱越鏧でないものがあります。またそれを使用しているお寺も皆無ではありません。
 壱越の音が出るから壱越鏧なのですが、鳴物の音は非常に微妙で、10個つくっても3~4個は不良品として廃棄することがあると昔聞いたことがあります。壱越鏧とは形や大きさではなく、壱越の高さの音が出る鏧ということなのです。
 壱越鏧を購入する場合、調子笛(壱越など雅楽の音階を出す、小型ハーモニカのような楽器)か、せめてハーモニカででも音調を確認してから御購入ください。
 なお、壱越鏧だけでなく、大鏧、磬、喚鐘など、自分のお寺のカネの音の高さを頭に入れておくと、読経などの場合に便利です。

6.沙羅

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 勤行の始、中切り、終などの合図に用いる鈴(りん)の一種に沙羅があります。沙羅とはもともと真鍮に似た金属の名前だそうです。
 口径5~6寸(1寸=3センチ)のもの(仏壇用)から1尺(1尺=30センチ)を超えるもの(本堂用)もあり、深さは口径のほぼ半分。沙羅の深さよりもやや高い円型の台を用います。台は中心部が直径1寸ほどくり抜かれ、穴をとりまく形でドーナツ型または六角形のクッションを置き、その上に沙羅を置き、沙羅の直径よりもやや長寸の枚(桴)で、口縁を内側から、引き上げるように打ちます。叩くと、"シャーン"または"ジャーン"という音がします。
 桴は本堂用で1尺余り、直径2~3センチ。桴の素材としては"塩地"という木が適しているようです。檜は柔らかすぎ、樫は堅すぎます。
 台やクッションや桴は出来れば同じ文様の箔一丁の金襴で表面を張り、桴は手もとに飾りとして、同じ箔一丁金襴で、輪仕立て、舌のようなものをつけます。
 
bati.gif
〔著者直筆〕 
  
  
  沙羅も鏧と同じく右膝の斜前に置きます。
 内陣の廻畳の上に置いてもよろしいが、多くは畳の前、床の上に置きます。
 背が低すぎる場合は、台の下に別台を置いて高さを調節してもよいでしょう。

basyo.gif
〔著者直筆〕
 
 桴は平常は頭を下にして沙羅の中に入れておき、勤行に先立って、合掌礼拝(経本を頂戴)してから、桴を取り上げて打ち、勤行中は経卓上の右端に置き、読経が終われば、(経本を頂戴し)合掌礼拝の後、元通り沙羅の中に入れてから起立します。
 沙羅を打つ回数は1、2または3打で、打上げ、打ち下ろしはしません。


5.大キン

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【編集部注】____________________________________
*お使いのPCの環境によっては鏧(キン)の字が表示されないことがあります。
鏧(キン)の字は磬の下の"石"の部分が「金」になります。
キンの字
キン.jpg
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 お寺の本堂に入りますと、宗派によって内部の構造は異なりますが、一般に外陣(僧侶や参拝者が坐る部分)の内陣ぎわに黒茶色の深いお椀型の大きな「カネ」が据えられています。これが大鏧です。
 口径は30~40センチから、大きなものになると70~80センチ、高さもほぼ口径に近くつくられます。真鍮の厚板を両足ではさみ、廻しながら槌で叩き、折おり火入れをして、材料を温めながらまずは口径と同じ寸法の円型に造ります。ここまでで約10日間かかります。つぎに深味のあるお椀型に造り上げてゆき、最後に砥石で磨き上げ、色づけをして完成です。金槌は先の部分、柄の部分、それぞれ約30~40センチの可成り重いもので、10種類ほどあり、両手で扱います。職人の仕事は午前2時間、午後2時間、週休3日が限度で1つを造るのに平均1ヶ月ぐらいかかるのでないでしょうか。夏は疲れる、冬は槌の衝撃が手にひびくので、製作は春秋の好期でないと難しい。大きなものだと1期1個だと聞いたことがあります。鏧の口径と原材料の関係は表の通りです。【下記表参照】
表.jpg
なお、値段は仮りに口径1尺3寸のものが100万円としますと、1尺5寸のものは
200万、1尺7寸の鏧は400万......と、2寸大きくなる毎に、倍と考えればよいようです。但し、通常は上下中の三段ぐらいに仕切って鋳造し、それを焙接して上から着色(染付け)することが行われています。価額は上記の製法のものの半分、1/3などのようです。


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