【編集部注】____________________________________
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鏧(キン)の字は磬の下の"石"の部分が「金」になります。
キンの字

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読経は美しい声で、みんなで揃って行うのが理想的ですが、厳密に言うと、読経にはさまざまな、定った音の高さで誦えねばなりません。
京都の西本願寺だけでなく、私たち一般の寺院や各家庭でも、通常は毎朝、親鸞聖人が御文をおつくりになった「正信念佛偈」と、それにつづいて「和讃」を読誦します。この場合にも、最初、「帰命無量寿如来、......」は壱越調で発音(発声)すると、きめられています。
しかし、たとえばピアノやオルガンなどの伴奏無しに、正確に楽譜通りの音の高さで歌唱することが必ずしも容易ではないように、「正信偈」の場合も、定った音の高さで発声することは、余程習熟していないと難しいのです。
あれはもう、3~40年も前のことでしょうか。
TVに「題名の無い音楽会」という番組があり、確か作曲家、黛敏郎氏が担当していました。音楽を、様々な角度から演奏し、解説する大へん楽しい番組でしたが、ある時、何だったかシンフォニーの1節を演奏し、会場の聴衆に、「さて、この曲名は?」と質問しました。曲が何だったか忘れてしまいましたが、非常に有名な曲だったので、私などにもすぐわかったほどでした。果して、会場からの答えも正解。
ところが黛氏の曰く、「それは正解ですが、また正解とも言えません」といって、先刻の曲を音を上げて演奏し、「これが本来の譜面の音の高さなのです」と紹介しました。これが音楽というものなのでしょう。
だから私達も、読経に際しては、正しい音の高さとスピード、リズム、それに姿勢その他、仏前での作法を、常にわきまえねばなりません。(尤も、"そんな難しいものなら、もうやめた"、などと言わないで、下手でも結構ですから、どうぞ毎日、読経してください。ここではあくまで原則をお話しているのです。)
さて、こんなことから、読経に際して、少なくとも序奏の役割を果たしてくれるものとして"リン"を利用したらよいわけですが、一方、大鏧にしても沙羅にしても、出る音の高さは区々です。全く同じ鋳型で造り、同時に炉で焼きを入れても、同じ音が出るとは限らないのだから、不思議といえば不思議、面白いと言えば面白いものです。
それで、大平洋戦争終了後間も無く、昭和20年代の中頃のことと聞いていますが、読経とか作法に関して殊に厳重であられた前門主の御意向で、打てば壱越の音が出る鏧が造られたのです。それが口径8寸、深さ4寸の壱越鏧で、大へん面白い、また都合の良いことに双調も同時に鳴ります。
毎朝の正信偈と和讃の最初は壱越、正信偈の最後の音は双調ですから、その何れによっても音程の正否がチェック出来ますし、平調(ハ調ミ)や黄鐘調(ハ調ラ)で発声せねばならない場合も、それぞれ"キー"を一度だけ高く発声すればいいのですから、本当に便利です。
なお叩き方は沙羅の場合と同じです。
【註】壱越鏧が考案される以前は本願寺御影堂では沙羅、阿弥陀堂では小型の鏧=小鏧が用いられていたようです。
【ご注意】壱越鏧の名で店頭に並んでいるのに壱越鏧でないものがあります。またそれを使用しているお寺も皆無ではありません。
壱越の音が出るから壱越鏧なのですが、鳴物の音は非常に微妙で、10個つくっても3~4個は不良品として廃棄することがあると昔聞いたことがあります。壱越鏧とは形や大きさではなく、壱越の高さの音が出る鏧ということなのです。
壱越鏧を購入する場合、調子笛(壱越など雅楽の音階を出す、小型ハーモニカのような楽器)か、せめてハーモニカででも音調を確認してから御購入ください。
なお、壱越鏧だけでなく、大鏧、磬、喚鐘など、自分のお寺のカネの音の高さを頭に入れておくと、読経などの場合に便利です。
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