5.大キン

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【編集部注】____________________________________
*お使いのPCの環境によっては鏧(キン)の字が表示されないことがあります。
鏧(キン)の字は磬の下の"石"の部分が「金」になります。
キンの字
キン.jpg
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 お寺の本堂に入りますと、宗派によって内部の構造は異なりますが、一般に外陣(僧侶や参拝者が坐る部分)の内陣ぎわに黒茶色の深いお椀型の大きな「カネ」が据えられています。これが大鏧です。
 口径は30~40センチから、大きなものになると70~80センチ、高さもほぼ口径に近くつくられます。真鍮の厚板を両足ではさみ、廻しながら槌で叩き、折おり火入れをして、材料を温めながらまずは口径と同じ寸法の円型に造ります。ここまでで約10日間かかります。つぎに深味のあるお椀型に造り上げてゆき、最後に砥石で磨き上げ、色づけをして完成です。金槌は先の部分、柄の部分、それぞれ約30~40センチの可成り重いもので、10種類ほどあり、両手で扱います。職人の仕事は午前2時間、午後2時間、週休3日が限度で1つを造るのに平均1ヶ月ぐらいかかるのでないでしょうか。夏は疲れる、冬は槌の衝撃が手にひびくので、製作は春秋の好期でないと難しい。大きなものだと1期1個だと聞いたことがあります。鏧の口径と原材料の関係は表の通りです。【下記表参照】
表.jpg
なお、値段は仮りに口径1尺3寸のものが100万円としますと、1尺5寸のものは
200万、1尺7寸の鏧は400万......と、2寸大きくなる毎に、倍と考えればよいようです。但し、通常は上下中の三段ぐらいに仕切って鋳造し、それを焙接して上から着色(染付け)することが行われています。価額は上記の製法のものの半分、1/3などのようです。


大鏧は一般には、部厚い(20~30センチ)の鏧布団の上に乗せられ、円型または四角型や六角型に枠組みされ、5、6本の脚をつけた朱塗りの鏧台の上に置かれていますが、鏧台を用いていない場合もあります。
 直径10㎝~15㎝ぐらい、長さが40~60㎝ぐらい、前半分が白い皮、手前半分が朱塗の桴で、大鏧の口辺を右手で、下から押し上げるように打ちます。
 なお桴に限らず、野球のバットや普通の棒でも、その一方の端近くを握って、同じバットか何か堅いものでトントンと叩くと、先端から、全長5分の1か4分の1の辺で、握っている手もとに衝撃が響かない部分があります。これをバットなどの場合は「芯」と通称しています。

 ボールはこの芯の部分で打たないと、手に痺れが来たり、バットが折れたりします。
 大鏧も、この芯のあたりで、口縁を叩くと、カーンとか、コーンとか余韻の長い柔らかい、良い音響を発します。

 鏧の類は、たとえ底が割れても鳴りますが、口縁に僅かでも傷がつくと、忽ちに鳴音に悪影響が出ます。取扱い(仏具ですから当然ですが)に、くれぐれも注意しましょう。
 叩く数は、お経の開始と終り、中間その他に、二打、三打、一打、打上げ、打下ろしなど様々です。
 大鏧は、鎌倉時代に禅宗と共に渡来したと思われ、堂内が土間の場合は僧侶は立ったまま読経します。鏧そのものは、余り大きく造れませんが、その代わり、立ったままで叩き易いように、鏧台の背丈を高く造ることもあります。
 なお「鏧」という字は、もともと隆鼓.jpg【←字が表示できませんので、画像となります。】(ロウ、鼓の音の意味)と同じ字で矢張りロウと発音したようです。
 さて、平板形の磬が発達して、お椀型の「キン」になるわけですが、漢音(中国北部の古い発音)で「ケイ」と読んだ字「磬」は、時代が下り、唐・宋音になって「キン」と発音されるようになります。
 やや脱線しますが、鈴は呉音、長江下流地域の発音で「リョウ」。この地方の仏教が朝鮮半島南西部の百済を経て我が国に入ったので、日本では経典の読誦に呉音を用いることが多いのです。
 しかし聖徳太子が遣隋使を派遣されて以後は華北の仏教圏の文化も流入し、その発音つまり漢音も依用され、我が平安時代以後、官用としては「漢音」に統一されたとか聞いています。漢音ですと鈴は「レイ」です。
 しかし、中国は唐時代250年を経て、五代、宋と時代が下り、ことに宋時代は我が鎌倉時代、室町時代に対応し、我が栄西(1141~1215AD)、道元(1200~1253AD)両禅師などによって禅宗がもたらされ、それと共に唐・宋音が入ってきました。唐・宋音では鈴は「リン」です。
 同様に、漢音でケイと発音された「磬」は唐宋音でキンと発音されることになったのでしょう。しかし現実の問題として大キン(大鏧)は真鍮を主体とした金属製ですから、磬に倣って、殸+金=鏧という中国のもとの字とは全く異った意味の字が我が国で発明されたのです。
 日本で作られた漢字を国字といい「畑」や「畠」なども、やはり国字の一例です。前者は水田ではなくて草木を焼いて造った耕地、後者は水が無く、白く乾いた田んぼという意味だろうと考えられます。

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