比較級、諦め...5

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それと、もう一つ、こんな思い出があります。
 もう30~40年も前のことでしょうか。
 拙寺の門徒で頑固なまでの念仏者。柔輭講という念仏者の集いの講長でもあった亀田さんという畳店さんの御主人から「若さん、私とこも一幅、床間の懸軸を書いてもらえませんか」との御依頼がありました。一応承諾して、さて一生懸命書いたが、どうしても、うまく書けない。
 あまり日数が経ってもと思い、詫びを言いながら、恐る恐る不満足な書を一枚わたしました。
 おじいさんは言いました。
 「若さん、あんたの言うことが気に入った。私は若い時からこれまで、何千枚畳を仕立てたか知れません。しかし正直言って、これは完璧と満足した畳は一枚もありません。
 心を込めて仕事をすればする程、欠点が見えてくるものです。有難う、いただきます」といって持って帰り、立派な表具をして下さいました。
 王羲之の"諦らめ"とはまた違って、件の畳屋のおじさんの言葉も、私の"諦らめ"に役立っています。
 話は最後に大きく脱線しますが、"蘭亭序"が書かれた会稽山陰の蘭亭という所は、東シナ海に大きく口を開く杭州湾の奥の大都市(人口200万?)杭州市の南東約50キロ、チャンチュー(中国酒)の中でも殊に有名な紹興酒の産地として名高い紹興市の南西に位置します。そして紹興市は、灘五郷の一角を占め、日本盛、白鹿、大関、その他・数々の日本酒の名産地たる我が西宮市の姉妹都市になっているのです。
 しかし娑婆の世は皮肉なもので、私は、書以上にアルコール類は全く駄目なのです。

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