故人からの贈り物

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 ここ何年もの間、北海道のM氏から、今ごろになると、ダンボール箱に一杯、特産のトマトジュースを送ってきていただいていました。大へん美味しいので、それを折りおりにいただいて1年間、丁度無くなったころに、次の年の分が来るという具合でした。
 ここ1年余、築地と半々の生活ですので、自坊にまだ多少残っているのですが、そのM氏は今春逝去され、従って、いま愛飲しているのは故人からの贈物だったことに思い至りました。手っとり早く言えば、今も故人から御馳走を受けているのです。

 しかし考えてみると、同様なことが身辺に一杯あります。
 私の着ている着物を織り、あるいは仕立ててくれた人は、果して今、生きているのだろうか......、法衣は、洋服は、茶碗は、箸は......? 考えはじめると、際限がありません。
 自坊の、私が住居している建物は、阪神淡路大震災のあと新築したものですが、2人の大工さんのうち1人は先年亡くなったし、彼等を連れて来たり、その他、復興に当って、1人で何十人分もの仕事、お世話をして下さったH氏も、今春逝去されました。
 この方がたの背後に、更に数えきれないほどの人びとが居られたと思うのですが、さし当り、今、私は上の方がたのお蔭で快適な住居が出来るのです。
 書斎の本棚に並び、折りにふれて貴重な知識を与えてくれる書籍の著者、また私たちに心の拠り所を与えてくださっている聖典の作者、あるいは出版社たちの恩恵も測り知れません。
 私たちの寺院の本堂も100年、200年前の建立が多いし、京都の本山、このほど御修復が完了した御影堂(ごえいどう)は寛永13年(1636年AD)、373年前に完成した世界屈指の巨大木造建築(重要文化財)です。400年近く前の人びとのお蔭を今被り、将来も受け続けるのです。
 参拝、拝観者は宗派を問いません。折を見て御参拝、古人の偉業をお偲び下さい。
 その他、殆んど何一つ、先人(および同時代人)の御労作無しには、私の生活も成り立たないと思います。

 これらの方がたの御苦労にあらためて感謝しながら、さて自分自身、後に残る人びとのために何が出来るかと、今そんなことを考えています。

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