改札口で

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 八重洲側の東海道新幹線改札口前で、切符を買いに行ってくれている秘書のT君を待っている間のことです。

 丁度、作業員2人が、3~4台並んだ自動検札機の点検を行っているところでした。長さ(奥行き)2メートル、上下30センチほどの横蓋を次々と開けて調べているのですが、見るとも無しに目をやって、驚きました。何と細かい器具、無数の部分品が、ぎっしり詰っているのです。
 これでなくちゃあいけないのかなと思いながら、ふと気がついたのですが、ここは東海道新幹線専用で、それ以外の切符は機械が受けつけません。しかし在来各線の乗車券や、関東ならばSUICA(スイカ)関西圏ならばICOCA(イコカ)という、ワンタッチの乗車券や通常の切符も点検する機能をも備えるとなると、機械の仕事は、更にずっと複雑多岐に亘る。
 私たちはただ利用、使用するだけですが、それら数えきれない機器を作り出した人間の頭脳や生産技術の高さに、あらためて敬意を表すると共に、知らぬ間にどれほどの力が働いて私たちが生かされているかということを考えさせられました。

 そうこうしながら、ふと見ると、小柄で黒っぽい服装の、多分、学校を出て間も無い年頃のお嬢さんが、検札機を通り抜けて行った彼氏らしい男性に向って、懸命に手を振っています。
 「そんなに別れが惜しいのなら、入場券を買って、せめてプラットホームまで行けばよいのに」などと思っていたら、今度は、そのすぐ横を通りかかった、おばさん4人とおじさん1人。
 そして、そのうちおばさん3人は検札機を通り抜けて改札口の内側に入った。ところがもう1人のおばさんが検札機の入口から、向こうに向って何か大声でしゃべっている。
 「多分、これも見送りなんだろう。それにしても、何もあんな場所に立たなくても」と思っている間、他の乗客たちは、おばさんの巨体で塞がれた検札機を避け、他の検札機を通り抜けて行く。
 その時、おばさんの後に居たおじさん、たまりかねたように、おばさんの両脇に、後から両手をあてて、その巨体を移動した。やっと他の乗客も、その検札機を通過できるようになりました。
 しかし、その時、おばさんも、おじさんも、検札機を通って中へ入って行ったのです。
 「なーんだ」。件のおばさんも、おじさんも、見送りではなかったのです。「やれやれ」。

 そんな一連の流れを横目で眺めながら、「T君まだかな」と思って、出礼所の方を振り返っていると、横から軽くトンと、私の身体に何かが当った。何と、さっきの彼氏見送りの彼女です。別れを惜しみ、きっと手を振り合っていたのでしょう。しかしいよいよその場を離れようとして、後退りしながら、なおも手を振っていて、私に当ったのです。
 彼女は、恥かしそうに、ちょっと会釈して立ち去りました。こんな優しい彼女で、彼氏も幸せでしょう。
 ほど無くT君がやって来て、切符を受けとりました。次の上京は3日後かな。
 それにしても、この駅の中では、私の知らない無数のことが、時を同じくして進行している。駅は、世の中は、宇宙は、物凄く広大、深遠なのですね。

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