池の鯉

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 いつもは横の廊下を素通りするのですが、先日、自坊の中庭の池の方をチラリと見ると、鯉たちが、手前の方に群がっています。丁度、朝で、腹が減っているのでしょう。
 「寒いんだけどなあ」
と思いながら、ガラス戸を開けて、餌をやりました。
 大小数十尾が、口をありったけ大きく開けて、チュウチュウ、プチュプチュ、音をたてながら食べています。
 それを見ていて、ふと思いました、「彼等には、これしか喜びが無いんだ」と。
 それに比べて人間はどうでしょう。
 悲しみも悩みも沢山あるが、喜びもまた一杯ある。人に生まれさせてもらったことに感謝すると共に、魚たちにも何かもっと他に、喜びを与えることが出来ないものかと思いました。しかし、まあ、せめて長生きして、子孫を殖やすことぐらいでしょうね。
 さてその翌朝、やはり廊下から、ガラス戸越しに庭を見ると、大きな鷺が鯉を狙っています。パンパンと戸を叩いたら、フワッと飛び上り、向うの屋根にとまって、こっちを見ています。まるで、"ここまでおいで"と言わんばかりです。
 折角、卵から孵化して、やっと身長5センチから10センチぐらいになった稚魚が、可哀そうに、これまで何十尾、いや何百尾、餌食になったことか。
 「畜生め、空気銃でもあったら、絶対、仇討ちしてやるのに」

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